本のカバーの上の方にあるのは無料の値札のようですが、もちろんただではなく、税込1,890円の少し厚めの単行本です。著者は、有名な「ロングテール」の言葉を知らしめたワイアード誌の編集長です。
内容は、ざっと1度読んだのでは分かりにくいところもありますが、自分なりに気がついたポイントとしてはこんなところでしょうか。
著者は、「非貨幣経済」という章の中で、1971年、社会学者のハーバート・サイモンの次の言葉を引用しています。
「情報が豊富な世界においては、潤沢な情報によってあるものが消費され、欠乏するようになる。そのあるものとは、情報を受け取った者の関心である。つまり、潤沢な情報は関心の欠如をつくり出すのだ。」そして、これからの帰結として「あらゆる潤沢さは新しい稀少性をつくり出す」というところへ結びつきます。
最初にこれを読んだ時、なにやらわけがわからなかったのですが、何回か読んだあと、潤沢な情報によって、関心が消費され、欠如(消えてしまう)すること。そして、あふれんばかりの潤沢さで失われた関心が新しい稀少性へ向かうことと理解しました。
これだけではよくわからないので、著者はさらにやさしい例をあげて説明してくれます。
「たとえば、職場で無料のコーヒーを好きなだけ飲めることで、よりおいしいコーヒーの需要を呼び覚まし、喜んでそれに高い料金を支払う。そして、一流シェフの料理からブランド飲料水まで、プレミアム商品は安価なコモディティの海から浮かび上がってくるのだ」
なるほど、なんとなく分かりかけてきました。乱暴に言うと、潤沢で無料、またはそれに近いものと稀少なものとは実は相性がいいわけです。無料(潤沢)は稀少の引き立て役でもありそうです。
そんなわけで、一部をご紹介しましたが、350ページ近い分厚い本でまだまだ読みどころがたくさんあり、示唆に富むお話ばかりです。
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