経済のサービス化(PDF資料)は以前から指摘されているところです。アメリカを例にあげれば、GDPに占めるサービス産業の割合が約75%と、日本のそれの約65%を上回っています。(1996年ころの数値ですから、今では変化していると思われます)
ところで、冒頭のリンク先のPDF資料でも述べられている製造業の「サービス産業化」は興味ある流れだと感じたので、それについて、ちょっとひとくさり。
子供のころ、近所の児童公園の歩道のとある場所に、なべや釜を並べた「鋳掛屋さん」が時折いたのを思い出しました。こわれたなべや釜を修理する仕事です。新品も売っていたのかどうかは子供のころの記憶なので定かではありませんが、でも、この職人さんは立派なサービス産業だったわけです。
ですが、何年かしたらその「鋳掛屋さん」を見かけなくなりました。どういう理由かははっきりしませんが、たぶん、高度成長期、すなわち使い捨ての時代が到来し、仕事にならなくなったのではないかと、推測してみました。。
そうして、この頃から、ものを直して大切に使うという習わしが影をひそめ、次々に出る新製品に目を奪われるようになり、高度成長、使い捨ての時代が始まったと考えても良さそうです。ものなんか直して使うなんて馬鹿馬鹿しくなってしまった時代だったのではないでしょうか。
さて、時代は流れ、バブル崩壊という痛い経験を経て、今なお続く「失われた20年」という長期低迷、デフレ経済が重くのしかかる最中に、日本史上最悪の東日本大震災とそれが原因の原子力発電所の事故と、二重三重の悲劇に見舞われ、日本人の社会意識の変化が決定づけられました。すなわち、節約、節電、いらないものは買わない、もったいない、使えるものは直して使うという使い捨て志向とは逆の節約志向・エコロジー志向です。
一方でアンケート調査の時点から言えば、東日本大震災で社会意識が変わったかも知れませんが、、PDF資料の巻末の図表、生活者2000年のアンケートにもある「消費に対する考え方」のように、「多少値段が高くても品質の良いものを買う」「多少値段が高くても、アフターサービスが充実している方がよい」「自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ」という考え方も現にあるようです。
このような観点から総合すると、高度成長期の代名詞であった使い捨て経済は再び鳴りを潜め、多少値段が高くてもライフスタイルにあった良いものを買い、アフターサービスの手を入れながら長く使い大切にする、という傾向が今後は増えていくと思われます。どうやら再び「鋳掛屋さん」の出番が回って来たようです。
ところで、職人さんはものづくりだけが得意と思われがちですが、どっこい、オーダーメイドにカスタマイズ、アフターサービスやエコロジーを意識した修理・リメイクなどをこなせるオールラウンドプレーヤー、純粋なサービス業者でもあるわけです。
そんなわけで、結論を言えば、サービス経済化が進めば進むほど、腕自慢の職人さんの出番や活躍の場所が、これからますます増えていくのではと思います。
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