エッセイの「司馬遼太郎が考えたこと 14」の”なによりも国語”という章に、「おとうさん・おかあさん」という言葉は明治初期政権の大きな発明だったといっていい。と述べられています。
韓国語では「オモニ」、英語では「マザー」、ドイツ語では「ムッター」と、これらの国々では、昔からあらゆる階層を通じてただ1種類の言葉で母親のことを呼び習わしていたようですが、日本語では司馬先生いわく「言語の一大混雑場」であったようです。
例えば、武士階級では「父上・母上 チチウエ・ハハウエ」浄瑠璃では「父様・母様 トトサマ・カカサマ」江戸の職人は「おとっつあん・おっかさん」京都の公家家庭では「御父様・御母様 おもうさま・おたあさま」と、ざっとこんな具合に述べられています。
さらに、ついでながらとして、「おかあさん」という呼び方は、江戸および京・大坂の中流以上の商家あたりで使われていたらしい。と述べられています。
そして、この「言語の一大混雑場」を解消すべく、当時の文部省が「おかあさん」に統一して使うようにという方向性を打ち出したようです。
明治36年の『尋常小学校読本』に「おかあさん おはやうございます」と出ているのが初出だそうです。(この教科書が出たとき、東京の山の手の奥様が、なぜ学校でそんなきたない言葉を教えるのか、とどなりこんできたという挿話があるそうです)
以上、ほとんどが司馬先生の引用になってしまいましたが、当時の文部省の「おとうさん・おかあさん」という言葉の発明により、言語が次第に統一されていっただろうと思われるその後の歴史が垣間見られ、興味をもったのでここに紹介させていただきました。
付け加えれば、時代は下り、この後、NHKのラジオ、テレビの全国放送により日本語の標準化が進んだのは多くの人の知るところです。
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