佐々木俊尚さんの「キュレーションの時代」は再読しないといられないくらいすばらしい本ですが、ウェブで見つけたこちらのサイトもそのキュレーションの1つのお手本のようで、見習うべき感を強く持ちました。
タイトルは「最初から不足していた民間商船」とあり、内容は太平洋戦争へ突入する時点での民間の商船の船腹量(せんぷくりょう:ここでは船の積載量の総トン数です)や、当時の海運業の実情などを時系列により当時の新聞記事を集め考察したものです。
痛ましい戦争に至る事柄ををキュレーションのお手本にするのはいささか不謹慎ではありますが、取り上げ方の見事さに感動し、これを応用して後のキュレーションを行う際の糧とさせていただくためにあえてご紹介いたしました。
さて、この内容を扱う当時の新聞記事に出てくる用語はやや難解なものも含まれているとは言うものの、ある目的を持って時系列で集められた記事をつぶさに考察すると、記事自体が相互に関連しあいそこにある種の物語が浮かび上がってきます。
例えて言うならば、名探偵シャーロック・ホームズが数々の手がかりを集めて謎を解き明かして行くような過程でしょうか。
まさに、その解き明かされた謎により、物語を眼前に出現させるのがキュレーションの真骨頂ではないかと思います。
太平洋戦争当時、戦略的な意味でアメリカは無制限潜水艦作戦を実行したので、数多くの日本の商船や貨物船が無残にも沈められていきました。一方で、日本海軍の潜水艦の攻撃対象はそのほとんどが戦艦などでした。(広島・長崎に落とされた原子爆弾の関連機材・物資を極秘任務でテニアン島に運んだ米重巡洋艦インディアナポリスがその帰途、日本の伊58号潜水艦の雷撃で沈没したのは有名な戦争秘話です)
学童疎開船であった対馬丸や、アメリカ人捕虜への慰問品を送るための緑十字船であった阿波丸などのような悲劇も数多くあったのでしょう。
太平洋戦争で戦没された方々のご冥福をあらためてお祈りするとともに、こうしてキュレーションにより考察されて眼前に現れた貴重な資料を無駄にすることなく活用していくべきかと思います。
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